栃木県栃木市の下野惣社へ7月22日に行ってきました。今までアップできなかったのは、「室の八島」のまとめが出来なかったのです。歴史的にも非常に難しく調べれば調べるほど訳がわからなくなるのです。
下野国国府跡。国府とは国の役所・国庁のことです。現在は前殿が当時のように復元されています。東西の藤棚は当時の脇殿(役人の事務所)と同じ規模で同じ場所だそうです。本殿は前殿の北側に接している宮野辺神社(1~2枚目)の下にあるのは確実と言われていて、神社があるために発掘調査は不可能とされています。


室(むろ)の八島。
「室の八島」とは和歌の下野国(栃木県)の枕詞です。色々な説があり場所の特定が昔から出来ませんでした。一応、大神(おおみや)神社の下野国の惣社内にあると言われてはいますが・・・・!惣社とはその国に昔から存在する神社<葦原(あしはら)の中つ国・・・大和朝廷・高天原(たかまがはら)とは違うそれぞれの国の在地勢力を祀った神社)を分祀して一か所に纏めた神社で、大和朝廷から送り込まれた国司は在地の神社へお参りしてそれぞれの神を鎮めることが主要な仕事の一つでした。「室の八島」は万葉集の時代から和歌の世界では数多くの歌が歌われていていますが、時代とともに「室の八島」の場所が変わって行ったのではないかとも思います。大神神社の案内板には
「大神神社は、今から千八百年前、大和の大三輪神社の分霊を奉祀し創立したと伝えられ、祭神は大物主命です。
惣社は、平安時代、国府の長官が下野国中の神々にお参りするために大神神社の地に神々を勧請し祀ったものです。
また、この地は、けぶりたつ「室の八島」と呼ばれ、平安時代以来東国の歌枕として都まで聞えた名所でした。幾多の歌人によって多くの歌が、残されています。」
と書かれています。つまりこの神社内のある池の中の八つの島が室の八島であるといっているのですが・・・・?けぶりたつ室の八島とはもともと宮中の炊事場の竈(かまど)を指していて、炊飯の蒸気のことを宮中言葉で「室の八島」と言っていたらしいのです。それがいつの時代からか下野国に結び付けられたとも言われています。また一説にはこの神社内の池から立ち昇る蒸気を室の八島と言ったとの説もあります。また、この近所に製鉄の技術者集団がいて鉄を鍛える時に立ち昇る水蒸気を室の八島と呼んだとの説もあります。また一番信じられる説は上記の下野国府辺りは湿地帯で池や川が流れていて、その辺りから立ち昇る水蒸気を室の八島と呼び景勝地であったが、乾燥とともに景観が変わって大神神社辺りに室の八島が移って行ったとの説が一番説得力があると思います。結論としては分かりません!!本来は室の八島に立ち昇る煙は見えるものではなく、見えない立ち昇る恋の煙のはずです!
また、孝謙天皇(称徳天皇)の看病禅師であり後に太政大臣禅師となった弓削(ゆげ)道鏡が政変の結果、官位を剥奪され左遷されて造下野薬師寺別当として下ってきた時に、この神社のかたわらに屋敷を持ったと言い伝えがあります。下野国薬師寺は奈良時代の日本三大戒壇の一つ東戒壇と呼ばれ、中央は東大寺、西は筑紫国の太宰府観世音寺でした。これらの三戒壇の認可で僧侶は正式な僧侶として認められました。日本に戒律を伝えたのは大唐国揚州の大明寺の住職で南山律宗の継承者であった鑑真和上でした。朝廷が鑑真和上の招聘にこだわったのは、当時の日本には正式な僧侶の資格制度が無く自称僧侶が蔓延していました。そのため正式に資格制度を作る必要に迫られて中国の唐から鑑真和上を招聘し日本の仏教に戒律を定着させたのです。ここのところの経緯については井上靖著の「天平の甍」を是非お読みください。道鏡は中央政界の政変により下野国に左遷されました。日光の金精峠は道鏡が下野国に入る時に上野国から金精峠を越えてきました。その時巷に言われている道鏡の一物が峠道で邪魔になり自ら切り落としたといわれ、それが金精峠の名前となったとの言い伝えがあります。道鏡の出世と没落には色々と激しい動きがありました。いずれ近いうちにこの辺りをブログに書いてみたいと思います。
この辺りの農家は大きな敷地を持っている農家が多いです。長さが100メートル以上ある塀が続いている農家が多いです。塀の中には蔵が数棟建っているのが見えます。戦後の農地解放を逃れた土地なのでしょうかね?農地解放は屋敷や山林は農地ではないとの解釈で残されましたが、地域によっては拡大解釈されて取り上げられてしまった地域もあります。また戦後の財産税と相続税で大地主達は土地の維持をすることが非常に難しくなり、没落していった大地主が多くなりました。
室の八島を詠った代表的な歌です。
いかでかは思ひありとも知らすべき室の八嶋の煙ならでは(藤原実方)
人を思ふ思ひを何にたとへまし室の八島も名のみ也けり(源重之女)
下野や室の八島に立つ煙思ひありとも今日こそは知れ(大江朝綱)
煙たつ室の八嶋にあらぬ身はこがれしことぞくやしかりける(大江匡房)
いかにせん室の八島に宿もがな恋の煙を空にまがへん(藤原俊成)
恋ひ死なば室の八島にあらずとも思ひの程は煙にも見よ(藤原忠定)